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失われた屋号を求めて
第24回 あの日からの日常
2月の半ばに福島県沖を震源地とする地震があり、東京も大きく揺れた。本棚に詰めた本が次から次にバタバタと落ちる様を見ながら、あと5秒経ってもまだ揺れが収まらなければ本棚を押さえにいこう。そんなことを考えていた。 本当は […] -
本屋の新井です
第46回 原作本
日比谷コテージには、映画の原作本を集めたコーナーがある。映画館が近いこともあって、映像化帯の文庫がよく売れるのだ。 作家が紡いだ物語が、文字ではなく、映像になって多くの人に届く。そのなかには、原作があるのなら読んでみ […] -
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第45回 猫の鳴き声
仕事帰りの夜道、歩を緩めれば、物陰からじっとこちらを見ている存在に気付く。駐車場の前で足を止め、手土産のおやつを持って「こんばんは」と声をかけると、猫たちはおっかなびっくり集まってきた。 それを繰り返すうち、彼らには […] -
本屋の新井です
第44回 暗中模索
踊り子の世界では、お姐さんのお客さんにチップをいただいた際、「お客様をありがとうございます」とお礼を言うしきたりがある。 ストリップ劇場が全国に何百館もあり、踊り子が何千人もいた時代は、先輩後輩の秩序を保つために、そ […] -
本屋の新井です
第43回 サッカー少女と小説家の叔父
「コロナで学校が休校になって、小学生の女の子と小説家の叔父さんがサッカーをしながら旅に出るお話なんて良さそうですよね。タイトル忘れちゃったけど」 開店前の職場で、同僚にとあるフェアの内容を相談していると、ちょうどいい […] -
失われた屋号を求めて
第23回 きょろきょろ、のその先
歌人・穂村弘さんの『図書館の外は嵐 穂村弘の読書日記』(文藝春秋)を読んでいたら、こんな記述に出会った。 「すごく面白い作品に出会うと、その本の世界からいったん顔を上げてきょろきょろする癖があるんだけど、あれって一体 […] -
本屋の新井です
第42回 本がまだない
芥川賞・直木賞の結果は、選考会が終わるまで誰にもわからない。もちろん候補作の出版社は、自社の作品が受賞すると信じて、受賞後の計画を立てているだろう。発表前に「受賞」の文字を入れたPOPや帯を刷ってしまう、気の早い会社も […] -
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第41回 20時で閉店です
先日、都内にある健康ランドで、今年初めての天然温泉に浸かった。 自宅から気軽に行ける場所に、こんこんと温泉が湧いている。もっとおしゃれでラグジュアリーなスパもあるけれど、私はここのしょっぱくて力強い湯が肌に合うし、湯 […] -
失われた屋号を求めて
第22回 記憶の引き出し
読みかけの小説に出てきた「下草がふくらはぎを切る」という表現に違和感を覚えたまま3行ほど読み進めてふと、その3行分の内容がまったく頭に入っていないことに気づいた。人間は一度見たものはすべて覚えているといつかどこかで読ん […] -
本屋の新井です
第40回 ハムの人
毎年、お歳暮にハムのギフトを贈り続ける人がいる。「ハムの人だ!」のテレビCMでもお馴染みだ。自分で買い求めるほどそのハムが好きでなくても、目まぐるしく変化しすぎる時代のなかで、変わることなく繰り返される恒例行事は、妙に […] -
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第39回 「はい、よろこんで!」
「閉店」と貼り紙がしてある、居酒屋の引き戸を開けた。駆け付けた店員は、今日で店を畳むから、限られたメニューしか用意できないと言う。そのつもりで来たから、問題はない。広い店内には、ひとりで静かに飲むお客が数人だけだった。 […] -
失われた屋号を求めて
第21回 カンビュセスの籤
「私の人生は、私のものだから」 公衆電話の受話器を握りしめたポニーテール姿の少女が、目に涙と希望を浮かべながらそう言い放った瞬間、ざばんと背後で波しぶきが立った。暗い館内は、封切りされたばかりの映画を見ようと押しかけ […] -
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第38回 年末恒例「推し本」イベント
今年で3回目となる「目利き書店員が本音で語る、愛と辛口にあふれた選評回!」が、12月2日に開催される。新潮社主催で、去年までは神楽坂にある「ラカグ」の広々としたイベントスペースで行われていた。 今年の会場は、新潮社の […] -
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第37回 文庫化は進化
単行本発売から約5年、ついに『アル中ワンダーランド』(扶桑社)が文庫化された。アルコール中毒になったまんきつ氏が、自らの体験を綴った漫画である。酔った上での失敗談は、つい吹き出すほど面白いのに、病気に対する恐怖がべった […] -
失われた屋号を求めて
第20回 巣ごもりのすすめ
特に新しくも古くもない普通のマンションのはずだけれど、普段まったくといっていいほど自分以外の住人の生活音が聞こえてこない。たとえば今こうして休日の夜にパソコンに向かってキーを叩いていると、自分の呼吸音とパチパチという打 […] -
本屋の新井です
第36回 これからの書物
3月に予定していた大好きなロックバンドのLIVEが、新型コロナウイルスの影響で開催が延期になり、もうさすがに中止か、と諦めかけた10月、ようやく振替公演が行われた。これほど長引くなんて、誰が想像しただろうか。 時を同 […]