第43回 視線の先に広がる未来

先日ブロンズ新社さんの新刊説明会があり、全国から書店員が集まった。丸善ジュンク堂書店のそれぞれの地区の児童書担当者とも久々に会うことができた。コロナ後こういった機会が減っているので、本当にうれしい。作家さんのトークや新刊案内。出版社の熱量がしっかり伝わってきて、どれも売らなくてはという気持ちにさせられる。懇親会では遠方の尊敬する書店員さんとも会え、大充実だった。

東京に集まった機会を活かそうと関西の同僚に相談され、せっかくなので刺激的に過ごせるよう2日目の予定をたててみた。まずは、一部のスタッフに丸の内で研修してもらうことに。刺激といえば、EHONSの発案者でもあり丸善丸の内本店の店長でもあるうちのボスだ。10分ほど、お言葉をいただくことにした。遠方で働くスタッフにはレアキャラなので緊張が走る。

「日々、同じことの繰り返しでは売場は成長しない。過去ではなく、未来を見据えた売場づくりが必要だ」

という言葉に大きく頷きながらメモをとるみんなを見て、いつも聞いているボスの言葉があらためて私の胸にも刺さる。

午後は、福音館書店へ。急なお願いにも関わらず快く対応いただき、午前中の緊張感とは裏腹に、和やか。たくさんの原画からどっぷり作品に触れ、ときめく。

丸2日間同行して、視点を変えることの重要さにあらためて気づく。新店舗研修に行くと、いつも言うことがある。

「その本をどこに置けば目立つか悩んだら、何度も、店内を歩くこと。必ず置かれるべき場所があるはず。売場を当たり前の風景にしてしまわないでね」

そんな時いつも心にあるのが『アリから みると』(福音館書店、桑原隆一文・栗林慧写真)。小さなアリの目線だと、当たり前だと思っていた風景がガラリと変わる。世界はこんなにもおもしろく、新しい発見に満ちているとあらためて気付かされる。

今回ブロンズの会に参加していた、毎度おなじみAちゃんと京都の専門店のJさんという児童書界の二大アイドルを捕まえ、丸善ジュンク堂有志の2次会に参加してもらったことも、かなりの刺激だったと思う。

後日提出されたレポートを読む。2日間で吸収したものを、早くアウトプットしたいという熱意がビシビシと伝わってくる。視点を変え、刺激を受け、新たな発想でみんなで未来をつくりたい。報告書に【今回知った児童書担当としての課題図書】としてAちゃんとJさんの著書が挙げられており、短時間での2人の影響力の強さににんまりする私なのだった。

(本紙「新文化」2025年7月3日号掲載)

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