第129回 教科書販売での品切れ

今年度の教科書販売では、教材として市販書籍を採用した後に品切れとなり、重版出来が5月下旬まで延びるケースが目立った。担当校だけで5アイテム発生し、先生方は代替テキストの再選定、授業計画の見直し、配布物の修正対応を余儀なくされた。

品切れとなったそれらは、「売れる可能性があった商品」ではなく「在庫があれば売れた商品」である。こうした事態は、単なる販売機会の損失にとどまらず、教育現場に追加の負担と混乱をもたらしている。この手戻りは発注に応じて、少部数から適時製造・納品する仕組みによって抑えられるのではないか。

さらに、トラック新法などで物流制約が強まれば「見込み生産」「見込み配本」「返品依存」に支えられてきた従来の流通モデルは維持が難しくなる可能性がある。その観点からも、需要連動で少部数から適時製造と補充をし、品切れを防ぐとともに、書店としても、欲しい本を欲しい時に仕入れられる環境が重要である。

こうした取組みを通じて、出版流通が、出版社と小売のマッチングや交渉を支援し、選書から物流・商流までを簡素化して、売り損じや返本を抑止する出版流通プラットフォームへと進化していくことを期待したい。

その実現は教育現場の安定運営だけでなく、出版産業全体の持続可能性の向上にもつながり、読者への安定供給を支える基盤としても、大きな意義を持つのではいだろうか。

いまこそ具体的な制度設計と運用整備が進むことを願う。

(本紙「新文化」2026年4月30日号掲載)

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