第9回 日本・アメリカ/増加するZINEへの助成・補助金、日米で異なる社会的評価

ここ最近、日本でもZINEを取り扱う書店が増え、出版社のなかにもISBNを取得せずにリトルプレスを制作・流通させるケースが増えてきた。

ZINEというと「個人や少人数制作の出版物」のイメージがあるが、それへの助成・補助金にはどんなものがあるだろうか。現状を整理して見てみよう。

日本ではZINE関係の助成・補助金といえば、イベントに対するものが大半だろう。主な出資源としては、国(文化庁、観光庁、総務省など)が用意する、まちづくりや文化資源活用・地域活性化のための補助金・交付金、また自治体や公的な芸術文化振興団体などが挙げられる。

これらが行政内部の予算編成プロセスに従い、図書館、公民館、文学館などで行われるZINEづくりのワークショップやフェス(販売イベント)に使われることが多い。

一方でたとえばアメリカでは、連邦政府や州政府、公的機関(国立芸術基金など)に加えて、民間の財団や企業(Amazonなど)もスポンサーとして資金提供をしている。日本と異なるのは、資金提供を受ける側の民間の作り手やイベントのオーガナイザーらが直接、編集・制作・宣伝費用を申請し、獲得できるものも少なくないという点だ。

その背景には、少部数の自主制作出版物に対するとらえ方、資金提供の目的の違いがある。ZINEは商業的な出版・流通から排除されがちな、コミュニティにおける多様なマイノリティ(人種、ジェンダー/セクシュアリティ、障害、階層など)の声なき声を表出する機会であり媒体である。それらへの資金提供は、社会正義・公平性の推進、エンパワーメントの実現につながるということだ。

だからこそ、発表の「場」を用意する図書館など(行政側)に対してだけでなく、制作する個人や小集団に直接、資金が投じられる。そして図書館は、そうしたさまざまな人々の生の声や表現を、地域資料としてアーカイブする。

もちろん日本で予算獲得に際して盛んにいわれる「若者やふだんあまり図書館を使っていないひとたちを惹きつける」「にぎわいの創出」といった建て付けが悪いわけではまったくない。ただ、そういう観点だけでZINEの制作・流通をとらえると、抜けおちてしまうものがある。

やはりそこには、アメリカ的な「地域や個人が抱える課題の発見・表明とそれらへの対応」という思想・発想も必要ではないか。

日本でも、そうした考えに基づいて、非営利・小規模の創作や雑誌の制作、流通・マーケティング資金、あるいはノウハウの提供などをしてくれる民間団体、企業は探せばきっとあるはずだ。大手企業でなくても、その地域に住む人々が「自分たちの物語を語る・まとめる」ための試みを、サポートしたいと考える地元企業も存在するだろう。

たとえそれが、地方の閉塞感や課題、負の側面を生々しく描き出したものであるとしても、それこそが地元民の圧倒的な関心と共感を呼ぶのであれば、政治・行政を動かすチャンスにつながるかもしれない。

地元の書店や出版社は、たとえば「まちおこし」という名目のもとに助成金を申請した場合でも、そういう作り手が排除されないよう、あるいは排除されそうなときこそ極力寄り添っていってほしいと思う。

(本紙「新文化」2026年5月21日号掲載)