書店にとってキャッシュレス決済は、もう「あれば便利」というより、「なければ機会を逃す」ものになりつつある。財布に現金をあまり入れずに店を訪れる人は増え、会計のしやすさは、そのまま買いやすさにつながる。
経済産業省が書店向けに、キャッシュレスサービスの決済手数料が低率なプランの周知を進めているのも、そうした変化を受けてのことだろう。これまで高い手数料を半ば当然のものとして受け入れてきた書店にとって、契約を見直せる余地があると知るだけでも意味は大きい。
しかし、「全東信」破産の報道は、便利さの裏側にある別の現実を静かに浮かび上がらせた。少なくとも2万店を超える飲食店を中心とした加盟店に、売上金が入金されていない可能性があるという。
書店で考えた場合、店では確かに本が売れ、客はカードで支払いを済ませているのに、その金が店に届かないことになる。日々の売上げで回っている小さな書店にとって、それは帳簿の問題ではなく、明日の仕入れや家賃に直結する切実な問題である。
一社に預けるということは、効率を得る代わりに、こうした見えにくい一点集中の危うさも抱え込むことなのだと思う。
店を続けるには足元の資金を守らなければならない。だから大切なのは、キャッシュレスにするかしないかではなく、どの条件で、どこと組み、どう依存しすぎないかを考えることだろう。便利さを受け入れながら、危うさは分け持つ構えが、これからの書店には必要なのかもしれない。
(本紙「新文化」2026年7月16日号掲載)

