今年度から日本歴史時代作家協会賞の選考委員を務めることになった。第15回日本歴史時代作家協会賞作品賞は周防柳『南朝 風姿花伝』(角川春樹事務所)に決定。そのほかの受賞作についても、協会のHPで確かめていただきたい。
書店員時代から今に至るまで、僕の読書の中心には、ほとんどいつも歴史時代小説があった。新刊が届けば真っ先に手に取り、平台に並べるときにはどの本を少し前に出すかを考え、棚の前で立ち止まるお客さまの視線の先を追いながら、この人にはこの一冊かもしれないと思い浮かべる。
そんな日々のなかで僕は本を売っていたというより、本と人が出合う場に立ち会っていたのだと思う。
いまは毎日店頭に立つことはできないが、別のかたちで本と誰かをつなげることができるならと思い、この役目を引き受けた。選考会でまず感じたのは、読むということの豊かさだった。同じ一冊を読んでいても、物語の運び、人物の立ち上がり、時代の置き方、言葉の選び方など、注目する場所はこれほど違うのかと驚かされた。
大先輩方の言葉に耳を傾けながら、自分ひとりの読みでは見えなかった奥行きに触れ、歴史時代小説の懐の深さをあらためて感じた。選考とは意見をうまくまとめることではなく、それぞれが自分の読書を持ち寄る営みなのだと思う。
選ぶことを通して、次の読者へ本を手渡す入口を少しでもつくれたら嬉しい。これからも、その思いを大切にしていきたいな。その積み重ねが、新たな読者との出合いを生むことを願っている。
(本紙「新文化」2026年9月3日号掲載)

