第7回 フランス:日本もデジタル教科書本格解禁へ、業界は仏の例参考に制度づくりを

2026年2月、政府は2030年度から、デジタル教科書を本格的に解禁する法案を特別国会に提出した。それによると「紙のみ」「デジタルのみ」「紙+デジタル」の3形式が想定されており、すぐにデジタル完全移行というわけではなさそうだ。

しかしデジタルに移行後、仮に出版社から学校への直販ということになった場合、教科書販売店は、これまで毎年確保できていた安定的な売上げを失ってしまう。

そして筆者の知る限り、日本国内ではデジタル教科書への移行に際して、書店が失う利益を代替・補填する仕組みづくりに関しての議論や行動は、そこまで活発に行われていないように思われる。

諸外国ではどうなのか。たとえば韓国は2025年からAIデジタル教科書の導入を進めているが、政府はリアル書店に対してとくに補填などを行わず、デジタル教科書販売への書店の関与の余地を用意しなかった。

実はこの点では、強固な書店保護政策で知られるフランスでさえも、必ずしも十分な対応がなされているとは言いがたい。

フランスでは原則、学校は出版社に教科書を直接発注するわけではない。発注するときは教育機関向けの専用プラットフォームから行い、各自治体の公共調達(入札)で選ばれた書店や卸売業者が間に入って注文処理の窓口となる。書店や卸売業者は、これによって15~20%程度の販売手数料を得ている。

また書店がそういったデジタル対応をしやすいように、フランス文化省の下部組織である国立書籍センター(CNL)などが、デジタル教科書の取扱いを含むデジタル・サービス導入への助成金を支給している。

フランスは法的に書籍の値引き制限が定められている国であるにもかかわらず、紙の学校用教科書の公共調達に関しては、例外として割引率の上限設定がなく、値引きは自由とされてきた。そのため従来から大幅な値引き競争が横行し、資金力のない中小書店は事実上、紙の教科書販売から閉め出されている。

一方でデジタル教科書に関しては、公的機関に対する割引は法律で一切禁止とされている。そのため入札の基準は価格ではなく、業者側が学校側の負担・労力をいかに減らせるか、アフターサービスや技術サポートが充実しているかなどの条件面ということになる。

そうなるとリソースの少ない一般の地元中小書店は、いくら助成金をもらってICT投資をしたところで、高度なシステムとサポート体制をもつ大型書店や卸売業者に入札で勝てる見込みは薄い。

そういった構造的な問題はあるものの、デジタル教科書販売に関しても、国が書店参入の余地を残した制度設計を考え、実施している点は参考になるといえる。

2030年はもう目の前だ。せっかく高まった政府による書店振興の気運がトーンダウンしてしまわないうちに、出版業界、書店業界は知恵を出し合って学校現場や国民も納得するような制度の素案を作り、政治への働きかけを積極的に行っていくべきではないか。

(本紙「新文化」2026年4月2日号掲載)