第29回 頼まれなくてもやってしまう

 いちばん最初は、売場に飾るPOPだった。そのうち店頭でお客様から尋ねられるようになり、ラジオやテレビでも同じようなことをしてきた。本のセールストークだ。書店員という立場上、真っ先に考えるべきは勤め先の利益であり、店の外で行うそれは、本そのものの応援でしかない。本はどこで買っても同じだからだ。だが、自分でも謎の情熱でもって、ジャパネットたかたのように語ってしまう。
 そしてついに、自分が出演しているストリップ劇場でも、あるコミックの販促を始めた。菜央こりんさんの『女の子のためのストリップ劇場入門』(講談社・7月20日発売予定)である。
 公演中に数回、コロナ対策のための清掃が入ることを利用した。退屈し始めた観客の前に出て、大きく引き延ばしたポスターを掲げ、コミックの内容、セールスポイント、基本情報を繰り返すことも忘れずに、5分ほど喋り倒す。その場で上がる質問にも、逐一答える。
 その劇場の名物スタッフがコミックにも登場することから、観客の反応は上々で、あの場にいた観客の何人かは、本をどこかで購入してくれるだろうと確信がもてた。舞台に立つその時の私は、書店員なのか踊り子なのか。もはや自分でもよくわからない。

(新井見枝香/HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)

(本紙「新文化」2020年7月9日号掲載)