第66回 屋台村

 福井県・芦原の温泉街には、焼き鳥、フレンチ、地魚やラーメンなど、10の屋台が連なる「湯けむり横丁」がある。
 契約期間は最長で10年と決まっており、独立を目指すことを条件に、地元の町おこしも兼ねて、家賃は一律6万円と格安だ。ジャンルの異なる10店舗が集まることで、相乗効果の集客も見込める。フレンチの店で焼き鳥を食べるという、店舗間でのデリバリーも可能なので、観光客だけでなく、地元の人にも愛されている。
 その証拠に、屋台村出身の餃子屋が温泉街から少し離れた場所に店舗を構え、人気店のまま5年が過ぎた。屋台村でお客のニーズや方向性を見定め、ある程度顧客を獲得したうえで出店をする。自分の店を持ちたいが、資金が足りない人にとっては、願ってもないプロジェクトなのだ。
 屋台村のカウンターに座り、店主やたまたま居合わせたお客と会話をする。どうして今の仕事をしているのか。これからやりたいことはあるのか。自分だったら、この一角で何屋をやるだろうか--
 カウンターに本がごろごろ転がっていて、小腹が減ったら気まぐれおつまみが頼めるが、酔ったら本が読めないため、お酒は1人2杯まで。「儲からなそうな店!」と皆で笑った。

(新井見枝香/HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)

(本紙「新文化」2022年2月3日号掲載)