第97回 怪しい肩書き

書店員の肩書きが無くなると、踊り子とエッセイストという、できれば近付きたくない感じの人になってしまった。実際そんなことはないのだが、人前で裸になる非常識な人と敬遠されても無理はないし、物書きなんぞに近付いたら何を書かれるかわかったもんではない、という懸念は、あながち間違いではない。

私の師匠である桜木紫乃さんは、踊り子でこそないが、筋金入りのストリップ好きだ。そして小説だけ書いていたらいいものの、請われるままエッセイにまで手を染めて、家族や担当編集者のことを好き放題に書いては迷惑をかけている。

最新エッセイ集『妄想radio』(北海道新聞社)によると、《オカンに話すとネタになる》からという理由で、2人の子どもは父親にだけ悩み相談をするらしい(賢明!)。

しかしあとがきで《執拗に周囲の人間を巻き込み、ネタにしたような気がします。》とあり、一応反省はしているが、変わる気はないようだ。

「元・書店員」という肩書きにはどうも抵抗を感じるが、プロフィールに入れてもいいですか? と問われれば、断れない。きっとそうしないと、私の価値がないのであろう。

えーい、クソくらえ! 師匠のように腹を括るには、まだまだ修行が必要だ。

(新井見枝香)

(本紙「新文化」2023年5月18日号掲載)