第2回 イタリア:学校図書館利用率UPプロジェクト、市民が書店で選書し学校に寄贈

イタリアの学校図書館は長い間、狭くて予算も乏しいため蔵書が貧弱、ゆえに利用率が低いという課題を抱えていた。これに対し、イタリア出版社協会(AIE:Associazione Italiana Editori)が中心となり、2015年に#ioleggoperche(私は読む、だから)という書籍寄贈プロジェクトを始めた。

基本的なしくみは、市民が全国約2400店の提携書店で本(原則、新刊)を自ら選んで購入し、特定の学校に寄贈するというものだ。各学校は「ウィッシュリスト(ほしい本の一覧)」を掲示しているが、リストにはない本を贈ることもできる。

さらには市民による寄贈総数に比例して、各学校が事前にリクエストした内容に基づき、AIEは会員出版社を通じて約10万冊以上の書籍を追加で寄贈する(その分の予算は別途確保している)。

このプロジェクトの宣伝のために政府機関が協力し、文化大臣や教育大臣がメッセージを発信、テレビCMも打っている。AIEだけでなく、文化省や教育省、イタリア著作者・出版社協会(SIAE)なども財政支援することで、大がかりなプロモーションが可能になった。

また、国民的人気のメロドラマのなかで言及されたり、著名人を含めて寄贈本をSNSにシェアするのがムーブメント化したことも、大きな広がりを生んだ理由である。このあたりは、かつて日本で「朝の読書」が注目されたきっかけのひとつが、テレビドラマ「3年B組金八先生」だったことと似ているともいえる。

2024年の寄贈数は約65万冊。その結果、18年に25%だった学校図書館の利用率は、23年には41%に上昇した。寄贈者は、「金持ちや企業が大量に」というケースは少なく、個人が圧倒的に多いという。寄贈先は幼稚園や小学校に対して活発に贈られているが(イタリアでは学校図書館に未就学児向けの施設も含まれる)、最も多くの寄贈を受けた学校を個別に見ると、中学校が並んでいる。

地元に書店がない学校でも恩恵を受けられるよう、他の地域の書店と提携する「ジェメッラッジョ(gemellaggio=双子提携)」という制度もある。もっとも個人が自ら買った後で寄贈するため、ネット書店で買って贈ることもできるわけだが。

一方で課題もある。本は、先方の学校図書館やスタッフの受入可能冊数が事前に示されておらず、図書館向けの装備がない状態で贈られる。そのため学校によっては、受入作業が大きな負担になる。事前にリストが示され出版社もバランスを見つつ寄贈するとはいえ、どうしてもジャンルの偏りや学校による寄贈数の差が出てしまう。

そんな課題はあるものの、このプロジェクトのおかげで図書館の蔵書が充実し、利用率が向上したことは間違いない。

日本でも、学校図書館、公共図書館の予算の減少は大きな課題である。イタリアの実例は「市民が自ら本を選び直接寄贈する」からこそ盛り上がった。ただ同じやり方を日本で真似た場合、装備作業その他で、図書館現場に過度な負担がかかる恐れがある。

とはいえ、何らかのかたちで「(子どもに)本を贈る」しくみ・機会・冊数が増えるなら、それに越したことはない。イタリアの取組みは格好のベンチマークのひとつといえるだろう。

(本紙「新文化」2025年10月2日号掲載)