第52回 箱庭のごっこあそび

「リカちゃんのON/OFF展」に行ってきた。あの国民的お人形のリカちゃんがなぜ長年愛されるのかを美容・ファッションの専門家が分析していたり、YouTubeチャンネル「現実を生きるリカちゃん」とコラボし、キラキラした部分の裏でのリアルすぎる日常をジオラマで立体的に見せてくれたりと、充実の内容だった。限定リカちゃん付きのチケットは1万円超え。でも、今しか手に入らない。当然お迎え決定。

大人になったのに、どうしてこんなにもごっこ遊びに心惹かれるのか。私は未だに胸がときめく。先日もまた、協力的な夫がシルバニアファミリーを購入してきた。お迎えしたのはコーギーファミリー。我が家のシルバニアのおうちは、多様な動物たちが大渋滞だ。

書店の仕事を愛しいと思うのは、ごっこ遊びに似ているからかもしれない。与えられた箱庭に、個性的な本たちを、「この子とこの子は友達だね」「隣にいるとしっくりくるね」なんて考えながら並べていく。でも箱庭は有限。きっとこんなときシルバニアのおうちだったら、屋上が使える! と、屋根の上にハンモックを置いたり、可愛いハンカチを敷いてお部屋を増築したくなるところだ。隙間を見つけるのも腕の見せ所だけど、素敵に見せるには引き算も大事。キラキラの新刊にも心ときめくけれど、古き良き相棒のロングセラーにも心地よい場所をつくってあげたい。箱庭づくりは、悩ましく終わりがない幸せな作業だ。

『リコちゃんのおうち』(偕成社)は酒井駒子さんのはじめての絵本。今と絵のタッチは違うけれど、駒子さんの絵本のなかで私は一番この絵本が好きだ。お兄ちゃんに妨害されたり、掃除のじゃまになったりで、遊ぶところが見つけられないリコちゃんにお母さんが段ボールの箱をくれる。窓とドアをチョキチョキ。床に端布を敷いたら、素敵なお部屋に! リコちゃんは、箱を椅子の上に置いて、早速2階建てに増築。わかるわかる! 私もテーブルの下に潜り込んで天板を屋根に見立て、その下は全部お家という設定にしたっけ。リコちゃんのごっこ遊び。共感しかない。

先日美容室で鏡を見て、ふと思う。カラーリングの色のせいか、髪質がなんだかリカちゃんに似ている。うれしくなって、鏡の前で何度も髪を揺らす。ああそうか。私、リカちゃんになりたいんだ。みんなに愛され、服装ひとつでパティシエにでもアイドルにでもなれるリカちゃん。いいなあ! 大人になっても、ごっこ遊びはやめられそうにない。

(本紙「新文化」2026年4月2日号掲載)

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