第5回 アメリカ:〝本の砂漠〟を解消する取組み、地域NPOの活動や本の箱設置も

自動車などの交通手段を持たない人々が、地理的に本にアクセスしづらい領域は「本の砂漠(BookDesert)」と呼ばれる。たとえばアメリカの田舎では、この問題にどのように取り組んでいるのだろうか。

人口密度が低く低所得者が多い地域では、書店業は成り立ちにくい。いきおい本へのアクセスを確保するプレイヤーとして、図書館が果たすべき役割が大きくなる。地方在住のアメリカ人は、平均して図書館から約7.9キロメートルの距離に住んでいるが、公共交通機関は少ない。ゆえに子ども、高齢者、障害者、低所得世帯などは、図書館へのアクセスも困難である。

アメリカの公共図書館数は日本の倍くらいあるが、保有するブックモービル(BM=移動図書館)の台数は日本とあまり変わらず、600~700台と見られる。さらにBMには課題がある。めいっぱい稼働させても、ひとつのエリアにあまり長時間滞在できないし、立ち寄れる場所がどうしても限られてしまう、といったものだ。

日本でさえそうなのだから、国土が広いアメリカではその点がよけい難しい。ただアメリカのBMは、本の貸出しに加えてWi-Fiを搭載し、ポケットWi-Fiの貸出しも行う。フードバンクと連携した食糧の提供や、就労支援サービスを行うこともある。

物理的なアクセス、リーチに難しい部分があるアメリカの図書館にとって、電子書籍、デジタルオーディオブックの貸出しとその案内は非常に重要だ。しかし、日本の地方交付税のような再配分のしくみが弱いアメリカでは、低所得世帯が多い地域の公共図書館は、予算も貧弱である。

そのように本屋も図書館も厳しい状況下、NPOによるBookDesert対策も行われている。

たとえば「ドリー・パートンのイマジネーション・ライブラリー」(DPIL)では、0~5歳の子どもに毎月直接、本を送付している。財団が本の選定や出版社との価格交渉、輸配送業務などの予算の大半を負担し、図書館や地域のNPOなどの地域パートナーは、本の代金と郵送費(月2.2ドル程度)を負担するだけで済む。その実費も「州が半分負担」するといった法律を定めている州がいくつもある。

ただしこれには、送付の希望者が自ら応募する必要があるため、そもそもその存在を知らなかったり、読書なんてどうでもいいと考えている人々や家庭には届きにくい。

このほかにも、リトル・フリー・ライブラリー(LFL)という、BookDesertに対する取組みがある。これは道路や街中に、書籍が詰められたライブラリーボックスを、一箱サイズから無償提供するというものだ。

日本で伊藤忠記念財団が、子ども文庫やよみきかせ団体に対して「子どもの本100冊助成」を行っているのに似ているが、過疎地でも人が集まる公共空間や私有地の一角に、誰もが自由に借りられるかたちで本の箱を設置するのがLFLの特徴だ。

そのメンテナンスと本の補充は現地のボランティアが担う。人々が善意で運用することを前提にした仕組みだが、「人の目に入る・付く場所に本を置く」点で意味があるといえる。

人口減少下の日本では今後、無書店・無図書館状態の地域は増えこそすれ減らすのは難しい。そんななかで〝限界集落〟の地域でもどうやって本へのアクセスを担保し、読書や本の購買を活性化していくのか--他国の事例から学ぶべきことは多い。

(本紙「新文化」2026年2月12日号掲載)