5月は初体験がふたつ。
4月から社則が変更になり、髪の色が自由になった。私は、意外にも学生時代は結構真面目に生きてきたので、金髪とかモヒカンとかを通ってこなかった。ピアスホールさえ、30代で開けたのだ。(怖かったので。やってみたらなんてことはなかった。)モヒカンに未練はないけれど、人生で一度も金髪にした経験がないまま生涯を終えることを、なんとなく残念に思っていたのだ。正直にいうと、この数ヶ月悩まされ始めた白髪を隠したいという気持ちがかなり大きい。4月にもう金髪にしてもいいんだ! と大きな気持ちになった途端、さらに増えた気がする。
先日やっと美容室に行った。でも、ぜんぶ金髪にする勇気がなく、インナーカラーと呼ぶには広範囲なブリーチをしてもらった。色の抜け具合や一緒に入れたカラーの色落ちなどで金髪は変化が楽しめるそうなので、ワクワクしている。
もうひとつが、この数年、同世代で飲んでいると必ず話題に上がる老眼鏡。もともと子どもの頃に遠視を矯正で視力回復させて以来、ずっと裸眼。まあ、だんだん悪くなってきてはいるけど、それでも日常生活に不自由はしていない。数年前、なんとなくメガネが欲しくて眼科に行ってつくったのだけど、もともと視力に左右差があるので、かけていてもなんだかしっくりこない。このなんとなくが本当に曲者で、生活が不自由だからとかではなく、メガネかけてみたい欲なので、結局かけなくなるのだ。
そんなこんなで大人になってからは裸眼生活のほうが長く、老眼なんて自分には無縁と思っていたのだが……見えない。手元が見えない。本が読めない。というわけで、晴れて老眼鏡デビューとなった。人生であと、何回「はじめて」があるんだろう……。
そういえば、『はじめてのおつかい』(福音館書店、筒井頼子作/林明子絵)が刊行50周年を迎えるそうだ。長年多くの読者の「はじめて」に勇気をくれた絵本。赤ちゃんのお世話で忙しいお母さんに牛乳のおつかいを頼まれたみいちゃん。あたたかな居間を出て、はじめての一歩。お店や看板、道行く風景。みいちゃんがドキドキしながら目にしたものにこちらも鼓動が早くなる。そしてちゃんとお買い物ができた時の安堵。「はじめて」を全力で応援したくなる一冊だ。
私の初体験はどちらも加齢対策ってところがなんともだが、老いを認めていくことも新しいチャレンジ。まだまだ、未知の世界が見たいし、そのうち、がっつり金髪にするかもしれない。気づいた方は、「はじめて」のチャレンジを、どうか褒めてくださいませ。
(本紙「新文化」2026年6月4日号掲載)

