第106回 文庫復刊で旬を生み出す

大日本印刷(以下、DNP)が2月から、書店が売りたい本を生み出せる〝未来の出版流 通プラット フォーム〟構築の取組みを開始し、その第1弾として5月から「DNP復刊支援サービス」の提供を始めた。

全国の各地の書店には、1冊でも多くの本を読者に届けようとしている書店員がいる。それぞれが店を構える地域のお客さまの「読みたい!」気持ちに応えるため、書店の店頭に並ぶたくさんの本や雑誌との出合いを演出してきた。

毎年6万点を超える新刊が出版される現状において、すべての本に同じように注力できず、店頭から消えていくのを見送るという悔しい思いをしている書店員が多い。そんな書店員が声を上げることで復刊が成立し、その店だけでしか買えない文庫本として再び店頭からお客様にお届けすることできるようになる。

書店や書店員が出合いとそのタイミングを文庫復刊でつくり出す。この仕組みを僕らは「Re:文庫」と呼んで普及を図ってきた。

本の旬は、新刊発売時だけではない。出合った時が新刊! 今後、書店員がつくり出す旬を楽しんでいただけたら嬉しい。

第1弾で復刊されるのは、いずれも双葉文庫で、松本健太郎著『レンタル家族』と、永井するみ著『隣人』の2点である。復刊を手掛けたのは、明屋書店と文真堂書店の2つの地方の書店チェーンだ。

規模の大小を問わず、地域のお客さまの読みたい気持ちに応える手段として、「Re:文庫」が定着してほしい。

(本紙「新文化」2025年5月22日号掲載)

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