第107回 吉成信夫氏の新刊に学ぶ

元ぎふメディアコスモス総合プロデューサーの吉成信夫さんの新刊『賑わいを創出する図書館 開館9カ月半で来館者100万人を達成した「みんなの森 ぎふメディアコスモス」の冒険』がKADOKAWAから6月23日に発売される。

ぎふメディアコスモスは岐阜市立図書館などが入居する公共施設で、吉成さんは2015年に同館館長となり、20年から総合プロデューサーに就任。「書店と図書館の連携」ですべきことを教えてくださった方だ。現地を訪れた際、館内を案内いただき、隅々まで張り巡らされた施策の意味と狙いを丁寧に教えていただいた。「本×人×コミュニティ」の可能性を強く感じた時間だった。

「図書館=静かな空間」という常識を覆した、ぎふメディアコスモス。人々が本に触れるだけでなく、勉強や暇つぶしなどの目的で来場し、コミュニティの場として、市民と本、市民と市民、そして市民と知の交差点になっていることが伝わってくる時間だった。

吉成さんの「子どもの声は未来の声」という言葉が印象に残っている。この言葉とメディアコスモスでの取組みは、我々NPO法人読書の時間の活動に大きなヒントを与えてくれた。中高生に本を読んでもらうため、ではなく、彼ら彼女らの居場所づくりからはじめた中高生との交流の日々は、ヤングアダルト世代と読書の距離を縮めるヒントになるのではと思っている。

書店のない自治体の存在が課題となり、図書館の役割の再評価も進む。そんななか、図書館の一つのあり方を示してくれた一冊だった。

(本紙「新文化」2025年6月5日号掲載)

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