第14回  本で人は繋がる

 BOOK FUN LETTER 2023が始まった。2019年から丸善ジュンク堂書店で開催している「好きな誰かに、好きな本のことを、手紙を書いて伝えよう」という企画だ。楽しかったことや、うれしかったことを手紙として送ることで、本への思いを人に伝えることの楽しさ、そして、その感動が共有されることの喜びを感じてもらいたいという思いから始まった。
 きっかけは新宿店時代のお客様。当時小学校の中学年だった女の子。本当に本が好きで大人の私にも物怖じせず、色々な話をした。そんな彼女が、学校ではアイドルやTVの話についていけず、学校生活になじめないという。お母様から聞いたその話がずっと心に残っていた。
 好きなアイドルの話で盛り上がるのと同じように、好きな本の話ができるのは楽しい。一人で味わうのもいいけれど、誰かに話すと、その本のどこが好きだったのかを再発見したりして、新鮮な驚きがある。その子は進学を機に本の話ができる同士を見つけ、お友達と一緒にお店のイベントに来てくれた。とてもいい笑顔だった。彼女は共有する喜びを手に入れたのだ。その後、お店に来る頻度はぐっと減った。さみしいけれど、私以外に本の話をできる仲間に出会えてよかった。
 数年前、彼女から久しぶりに連絡が来た。高校生になっていた。今は、放送部で副部長をしているという。「今度の文化祭で、朗読劇をするんです。登場人物がたくさん出てきて、女子校なのであまり恋愛ものっぽくない物語がいいな」。

 久々の相談に腕が鳴る。一先ずお店に来てもらうことにした。久々に会った彼女はすっかり大人びていたけれど、本の話をはじめたらキラキラ輝く瞳は変わらない。「兼森さんが昔薦めてくれたじゃないですか」私も忘れていた、当時彼女と共有したタイトルが次々と出てくる。
 結局、「これにします」と演目に決めたのは、そのなかの一冊。アレックス・シアラーの『魔法があるなら』(PHP研究所)。ある日突然デパートに住むことになる一家の物語だ。
 誘ってくれたので図々しくも文化祭に行かせていただいた。コミカルでスリリング、ハラハラしっぱなしだけど最後はハッピーエンド! いきいきとした声が心地よい。あの日私が薦めた一冊が、彼女によって多くの人に手渡された瞬間だった。
 本で人は繋がる。もし、繋がる誰かを思いつかなければ、ぜひ本屋さんに行ってほしい。私は、いつでもあなたを待っています。
(本紙「新文化」2023年2月9日号掲載)