第6回 フランス:書店・出版界向け研修制度が充実、スキルアップに手厚い公的援助

以前、本コラムで、カナダのデジタルマーケティング支援プログラムについて取り上げた。それ以上に、様々な研修(職業訓練)制度が充実している国に、フランスがある。研修自体は、民間の業界団体が運営する専門機関や各地域の機関が行うが、これらの研修プロジェクトに助成金を出し活動資金を負担しているのは、文化省や地方文化局である。

フランスの制度は、プログラムが良い意味で細分化・多様化しているのが特徴だ。例えば出版社や書店をこれから開業する、または就職・転職したいという初心者向けから、すでに働いている人向けのスキルアップまで、それぞれのレベルやニーズに応じた講座が用意されている。

受講期間は、特定のトピックだけなら1時間ほどのウェビナー(オンラインセミナー)や、半日で終わるワークショップ。法務、会計、ソーシャルメディア活用などを学ぶ短期のスキルアップ講座は、1日7時間で1~3日、長いものだと未経験から書店を開くためのコース=175時間の研修+数カ月のインターンシップなど。

受講の仕方も、月1~3日通学し6カ月かけて学ぶもの、開店前の朝8時45分からのウェビナーもあれば、講師に職場に来て教えてもらうスタイルもある。

テーマは、コミックなど売上好調なカテゴリー、「ロマンタジー」といった若者に人気のジャンルの専門知識を学ぶもの、特定分野(例えば宗教)の本の入門講座、PhotoshopやInDesignなどソフトウェアの使い方、ニュースレター活用法他のマーケティング、はたまた図書館納入への対応、資金繰り、在庫・返品管理などの経営実務、アクセシビリティ対応、接客までと実に幅広い。

これらの受講費用は、1日500~650ユーロ(約8万円~10万円)と決して安くない。しかし中小企業(とくに従業員50人未満)に対し、公的な資金管理機関が教育費を100%負担することも多く、受講者や企業(書店)の負担ゼロというケースも珍しくない。そして中・長期の訓練プログラムの修了者には、国家資格や業界団体認定の資格、公的な職業認定が与えられる。これらの資格は、銀行の融資や公的機関の助成を得る際に、また就職・転職の際にも役立つという。

ひるがえって日本ではどうか。多くの事業者がカツカツでやっている出版業界は、他業界と比べて研修の機会が著しく乏しい(図書館と比べても少ない)。受講経験者が少ないため、「学びが仕事の成果に繋がる」実感も得にくい。

日販の出版流通学院、JPICの読書アドバイザー養成講座、鳥取の「本の学校」などがあるものの、例えばワンオペで切り盛りするひとり出版社や独立系の書店員(とくに地方在住者)が、働きながら通いやすいプログラムにはなっていないことが多い。そして、国や自治体からの受講費用の助成は基本的にない。

知識やスキルアップ以外にも、研修・講座を通じて受講者同士のヨコの繋がり、講師と受講者とのタテの繋がりを得ることは、その後の動きをつくるうえでも大切である。だがそうしたネットワーキングの機会も決して多くない。

目先の費用に対して、補助金を得ることはもちろん大事だ。しかしそれだけでなく、業界の持続・発展のためには、本に関わる人びとの「人的資本投資」への助成を、国や自治体に訴えていく必要があるだろう。

(本紙「新文化」2026年3月5日号掲載)