第130回 和書が世界で担う役割

海外における和書への関心は、いま確かに広がっているように感じる。柚木麻子『BUTTER』や雨穴『変な絵』の世界的ヒットは記憶に新しい。本の街、神保町に足を運ぶ外国人観光客も増加傾向にあるという。

日本の本といえば、まずコミックを思い浮かべる人が多かったと思う。マンガやアニメは日本文化への入口として大きな役割を果たしてきたし、世界の人々を惹きつけてきたことは間違いない。

ただ、日本に心を寄せる人々の興味は、そこで終わるものではない。物語を楽しむところから始まった関心は、やがて日本の暮らしや美意識、食、旅、そして言葉そのものへと広がっていく。

日本を訪れた体験をきっかけに、もっと深く知りたいと思う人もいれば、SNSや動画を通じて日本文化に触れ、背景にある考え方や価値観を本で確かめたいと感じる人もいるだろう。

そうした思いに優しく応えていけたらすごく素敵だ。語学書や実用書、文化や教養を伝える本、写真集など、コミック以外の和書にも確かな需要が生まれている今、必要とする人へ必要な本が自然に届く環境を、少しずつ整えられれば、和書はこれからもっと暖かく、日本文化を届ける架け橋になっていくと思う。

本を手に取ることは、遠くにある文化と静かにつながることでもある。

その一冊との出合いが、日本への理解や親しみを深め、新しい関係を育てていく。そうした積み重ねの先に、和書はより身近な存在として受け入れられ、日本文化を伝える力をいっそう豊かにしていくはずだ。

(本紙「新文化」2026年5月21日号掲載)

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