国内外を問わず、イベント、体験、参加型の読書や本の購買が広がっている。いくつかの国では「書く/描く」がブームとなり、あるいは定着してきている。
たとえば韓国では、本に関わる行為をポジティブにとらえる「テキストヒップ」現象のなかで、詩や古典・名作文学などの一節を手書きで写す「書写」(ピルサ)が盛り上がっている。
また、ブラジルを中心とした中南米では、大人向けの塗り絵がストレス解消、リラクゼーションツールとして流行している。
韓国でもブラジルでも、デジタルデトックスとして目の前の作業に集中することで得られる充足感が謳われる。一方で完成した書写や塗り絵は撮影され、Instagramなどに投稿される。
それらはつまり、アナログとデジタル、ひとりでの集中の時間と仲間内でのシェアの時間を行き来する行為として、現代人のニーズに応えているのである。
日本では、文学フリマ、コミティア、神保町ブックフェスティバルといったイベントやZINEの盛況などはよく語られるものの、人が手を動かして書く/描く行為は、今のところそれほど着目されているとはいえない。
本に関するイベントと言えば、読書か本を売り買いするもの、読み聞かせなどが中心だが、参加者が手を動かして書く/描く/つくるといったアクティビティも、もっと増えていいだろう。
公共図書館、学校図書館でのコミック、グラフィックノベル関連のプログラムも、欧米を中心に、広がっている。
アメリカでの調査(ALA Graphic Novels Survey2023)によると、こうしたプログラムの実施率は、公共で84%、学校で28%に及ぶ。
なかでも注目すべきは、コミック、グラフィックノベル制作のワークショップが、公共33%、学校11%で実施されていることだ。
こうした旺盛な需要を背景に、欧米の図書館関係者が日本マンガの蔵書に関して発表する際、日本の出版社に対して次のような要望をすることが多い。
ひとつは「ローティーン以下でも読める日本マンガを、もっと翻訳してほしい」、もうひとつは「イベント、ワークショップで使えるような(外国人でもわかる内容の)日本マンガの教則本がほしい」。しかし筆者が知るかぎり、そのどちらに対しても、日本側の反応は鈍いようである。
話を戻すが、現在、世界的な図書館のトレンドとして「メイカームーブメント」「ものづくり」「創作ワークショップ」などを採り入れる動きがある。単に読むだけでなく「つくる」行為が加わることで、本は参照され必要とされて一層、需要が広がる。
ところが、コミックに資料費の約1割を投じることが珍しくなくなった米・仏などと比べると、「マンガ大国」であるはずの日本の図書館は、コミックフォビア(恐怖症)と言っていいほど消極的な姿勢をなかなか変えようとしない。したがってマンガ家を招く、あるいはマンガを描くイベントも、米・仏と比べてはるかに低調だ。
もっとも、図書館が必ずしもすべてを引き受けて行う必要はない。書写、塗り絵、マンガを描くなどの「手を動かす」イベントや、そのための空間づくりは、書店や出版業界団体などが担当して行ってもいい。どういうかたちであれ今後、日本の環境に合ったそれらの広がりを期待したい。

