東京商工リサーチが9月18日に発表した「書店業績調査」を読んだ。
2025年度の主要書店304社の売上高は前年度比1.6%増、最終利益は365.4%増と、数字だけ見れば少し明るさが戻ったようにも見える。けれど、その内実に目を移すと、増収増益は41社にとどまり、売上高100億円以上の16社が全体売上の75.2%を占めている。日々書店にいる者の感覚からすると、この数字にはやはり偏りがある。
本を売るだけでは商いが立ちにくい時代なのだと思う。
それでも、本屋なのだから、本を仕入れ、棚をつくり、人と本を出合わせることによって続いてほしいという思いは消えない。そんなことを考えていたとき、東京・自由が丘で動き始めた「Stoa’s」のことを思った。
この店は、本を「売る」場所としてではなく、本を「作る」場所として本屋を捉え直そうとしている。Books, Coffee & Herbsを掲げ、読む、働く、話す、学ぶ、発信するといった営みをひとつの空間に重ねる。本を書きたい人や、まだ言葉になりきらないものを抱えた人がそこにいられるようにする。
棚に並ぶ本だけでなく、その手前にある対話や編集や出合いまでを引き受けようとするところに、この店の新しさがある。書店の延命策というより、本を起点に人と知をつなぎ直すための、小さくて静かな実験が、もう始まっているのだと思う。今の書店に必要なのは、こうした役割なのかもしれない。
(本紙「新文化」2026年10月8日号掲載)

