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第32回 人生の手触り
他人の人生に触れることの怖さを初めて知ったのは小学生の頃のことだ。町内に住む一人暮らしの老人に手紙を書くことになった。私は祖父母と一緒に暮らしていて、とても厳しい人たちだったけれど同時にとても愛してもくれていた。だから […] -
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第10回 「TikTok効果」の限界と課題、クセの強さ補う工夫が必要
これまで2回にわたり、TikTokで「バズる」本の特徴・動向を検証してきた。今回は、全国展開の書店チェーンの本部に勤務する傍ら、TikTok上でマンガを紹介している人への取材内容を参考に、そこから見えた「TikTok売 […] -
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第60回 秋のかき氷
急に秋めいた日の午後、私は新宿のはずれにあるビジネスホテルにいた。かき氷屋が開店したと聞いて、とりあえず予約の時間に来てみたのだが、勝手がわからない。ロビーに人待ち顔で佇めば、まるで訳ありの人妻だ。 するとタブレット […] -
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第59回 しゃぶしゃぶ食べ放題
知人としゃぶしゃぶ食べ放題の店に入った。店員に案内された席に着き、タッチパネルで肉をオーダーする。しばらくすると「お待たせいたしました」と女性の声がするも人の姿はなく、ずんぐりとしたロボットがテーブルの脇に佇んでいた。 […] -
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第9回 TikTokでバズる本とは?/ユニークで意外なその条件
前回のこの欄で、TikTok発で10代(とくに女子)にバズった本は、すでに過去に一度以上話題になったタイトルの方が多いと書いた。とはいえ、過去に売れたものならなんでもいいというわけではなく、そこからさらに傾向は絞られる […] -
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第31回 地層と暮らす
元々は本を一冊読み始めたら読了しないと次の本に進めない性分だったはずが、いつしか数冊の本を併読するようになった。どちらの読み方にもそれぞれ利点があって、これからもその都度選んでいけたらと思っているけれど、併読には困った […] -
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第58回 米と蕎麦
田んぼだと思っていた一角に、白く小さな花が咲いている。地元の人に訪ねると、蕎麦の花だそうだ。そういえばこの地域は、米だけでなく、蕎麦の名産地でもあるのだ。 ひとつの体で複数の仕事を持つメリットはたくさんある。書店員を […] -
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第57回 旅と随筆
仕事で滞在している熱海から、JR伊東線で伊東にやって来た。駅前の土産物屋を抜けると商店街で、土地に湧く温泉は共同浴場として街に溶け込んでいる。 ゆったりと流れる川と共に歩けば、やがて海へと辿り着くだろう。川の向こうに […] -
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第8回 TikTokからバズる本が続出/「新しさ」の裏側に「保守性」も
2020年から短尺の動画共有サービス、TikTok上で、「けんご 小説紹介」(@kengo_book)などが紹介したことをきっかけとする本のヒットが相次ぎ、その支持層の中心は10代だと、たびたび報じられている。 代表 […] -
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第30回 夏の思い出
「本当に怖い話は、こんなところで気軽に話せたりしないよ」 学生時代、バイト終わりに訪れたチェーン店のカフェで、友人がストローの入っていた紙袋を細かく千切りながらそう言った。冷房が効き過ぎていて、切望していたはずのアイ […] -
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第56回 猫と暮らす
亡くなった知人が遺した猫を引き取るため、引っ越しを決めた。都心で猫と暮らせる物件は思った以上に少ない。壁や備え付けの家具で、爪研ぎをする可能性があるからだ。 たまたま入った不動産屋さんに事情を話すと、担当してくれた人 […] -
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第55回 岐阜初上陸!
初めてJR岐阜駅に降りると、三省堂書店の大きな看板が目に入った。そうか、駅ビルとは聞いていたが、こんなに便利で目立つ場所にあったのか。隣にはスターバックスがあり、すでに賑わっている。書店は開店時間前だが、スタッフが準備 […] -
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第29回 リミッターを外す
ホームに降り立つとすぐ、むっと暑い空気がまとわりついてきた。改札階へと続く階段を一段、一段のぼっていく。すぐ目の前に知らない人の背中があって、無意識に距離を取る。人との距離に敏感になった。 駅を出て、今日はどのルート […] -
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第7回 「5分後に意外な結末」の面白さ、学研プラス・目黒哲也氏に聞く・下
前回登場いただいた学研プラス・コンテンツ戦略室の目黒哲也氏は「5分後に意外な結末」シリーズのほかにも、一般書の「マナーとコツ」シリーズ(累計160万部)、小学生向けの「最強王図鑑」シリーズ(同150万部)、学参の「マド […] -
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第54回 旅先の朗読会
旅先の旅館で、うっかり本を忘れて退屈していると、友人が詩集を持って来たというので、朗読することになった。 作者を直接知っている友人は、その詩人がどんな姿をしていて、普段はどんな言葉遣いをするのかを知っているので、どう […] -
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第53回 3年越しの手紙
三浦しをんさんの小説『ののはな通信』(KADOKAWA)が文庫化した。あれから3年の月日が経ったのだ。私は当時、今とは別の書店で働いていた。 仕事帰りに単行本を買って、喫茶店で読み始めた『ののはな通信』は、同じ女子校 […]